名古屋、長久手、東京。3箇所での個展を終えて気づいたこと。

撮影の舞台裏や雑記

「広げる年」と捉えた2026年

5月から名古屋、長久手と続いた個展「躍動」。
そして9月の東京展をもって、すべての会期が終了した。

2026年は、自分の中で「広げる年」と位置付けて活動してきた。
その一つとして考えていたのが、これまで撮ってきた写真を普段とは違う場所に置いてみること。
いつものお客様やInstagramのフォロワーさんだけではなく、これまで接点のなかった人にも見てもらいたい。そんなことを、この一年の目標の一つにしていた。

その中で、拠点である名古屋・長久手にとどまらず、東京という初めての場所まで作品を届けられたことは、自分自身の活動にとって間違いなく一つの起点になったと思う。

写真展を通して伝えたかったこともある。
それは、私の活動の根底にある、
「写真を生活の中に取り入れて、楽しんでもらいたい」
ということ。

今はスマートフォンで簡単にきれいな写真が撮れるし、プリントをしなくても、写真は画面の中だけで十分楽しむことができる。それでも私は、写真を実際に形にして、部屋に飾り、暮らしの中で眺めることには、また別の良さがあると思っている。
ふと目に入った一枚から、撮影した日のことを思い出したり、一緒に暮らしていた頃のことを思い出したり。その日の空気や景色、毛並みや匂いまで、写真をきっかけに戻ってくることがある。
そんな写真の在り方を、もっと知ってもらいたかった。
それが、今回写真展を開いた理由の一つだった。

展示をしてみて意外だったこと

実際に展示をしてみると、自分では想像していなかったことにも気づかされた。
在廊し、会場で話している中で、
「モデル犬は、どうやって募集されているんですか?」
と聞かれることが何度もあった。

最初は少し不思議だった。
というのも、Ikuty Photoでは普段から愛犬・愛猫の撮影依頼を受けているし、今回展示した写真の多くも、実際に撮影をご依頼いただいたお客様の愛犬だからだ。

でも、よくよく考えてみれば理由は分かる気がする。
ここ一年ほど、写真展や制作について発信することが増えた。以前のように撮影会のお知らせを頻繁に出すことも減った。自分では普段の撮影も変わらず続けているつもりだったけれど、見る側からすると、どうやら『展示する作品を作るために犬を撮っている人』のように見えていたのかもしれない。

そういった事実は一つあるとして、
「普通に撮影を頼めることって、意外と伝わってないのかもしれないな」
とも思った。
これは今回の展示を通して見つかった、ちょっとした発見でもあり今後の宿題でもある。

ちなみに、いつでも撮影ご依頼は受け付けております😄。

展示写真から始まった、愛犬の話

名古屋のSONYストア、長久手文化の家、東京のピクトリコ。
それぞれの会場には、それぞれ違った雰囲気があった。

SONYストア名古屋では、撮影に使っているカメラやレンズなど、機材について質問していただくことが多かった。東京会場はプリント工房に併設されたギャラリーだったこともあり、紙やプリント、額装方法について話す機会が多かったように思う。
そして、どの会場でも嬉しかったのが、犬と暮らしている方や、以前犬と暮らしていた方が足を運んでくださったことだった。Instagramに出した広告を見て来てくださった方も多くいらっしゃった。

そうした方たちと展示写真を前に話していると、不思議なくらい自然に愛犬の話が始まった。
展示されている犬は、その方にとっては会ったこともない犬のはず。
それでも、
「昔、こういう犬と暮らしていて」
「この写真を見ていると思い出しちゃう」
と話してくださったり、スマートフォンに残っている昔の写真を見せてくださったりした。
展示写真をきっかけに、見ていただいた人の中にある大切な記憶が出てくる。
これは、展示を始める前にはあまり想像していなかったことだったが、個人的にはとても印象に残っているし、楽しい会話になった。

食い入るように見つめる(写真撮影は許可いただいています)

現物で見ると、やっぱり違う

そして、もう一つうれしかったことがある。
それは、実際のプリントを目にした瞬間に、見る人の表情がふっと変わる場面に何度も立ち会えたことだった。

今回展示した写真の多くは、Instagramやホームページですでに公開しているもの。
つまり、「会場で初めて見る写真」だったから心を動かしてもらえたわけではない。
それでも、実際にプリントされた写真を前にすると、

「実物は迫力が違う」
「スマホの画面で見るのとは印象が違う」

と言っていただけることが何度もあった。
これは、本当にうれしかった。今回の写真展で伝えたかったことの一つが、まさに「現物で写真を見る楽しさ」だったから。
画面の中ではスワイプで流れていってしまう一枚が、形になることでそこに留まり、空間の中に存在する。そして、ときにはそこから過去の記憶まで呼び起こされる。
写真には、そんな力があるんだと、改めて思った。

お客様の愛犬が、誰かの足を止める

普段、私が撮影するときに一番大切にしているのは、依頼してくださった飼い主さんに喜んでもらえる一枚を残すこと。そして、愛犬・愛猫の最も輝ける瞬間を導き出すための状況を考えた結果、夕日の下で撮影をしたり、水に飛び込む瞬間だったりという構図(瞬間)が生まれた。撮り方はその時々で違うけれど、彼らの「輝く瞬間」を、残したいという気持ちで撮影をしてきた。

今年展示した写真も、その多くは実際に撮影を依頼してくださったお客様の愛犬を展示させてもらっている。普段は家族と一緒に暮らしている犬たちが、プリントされ、額装され、ギャラリーの壁に並び、そして見てくれた誰かの足を止め、そこに何かを感じてもらえた。そんな光景を何度も見て、写真をデータだけで終わらせたくないと思う理由が、以前よりもはっきりしたように思う。

「愛犬・愛猫の今を、唯一無二の一枚へ。」

これは、私が動物たちを撮るうえで大切にしている言葉であり、IkutyPhotoのコンセプトにもなっている。
今年、写真を撮って届けるだけではなく、いつもの場所から少し遠くまで広げてみることに挑戦してきた。そして実際に展示してみて、写真は撮った瞬間だけではなく、その後の時間の中でも価値を持つものなんだと改めて感じることができた。

3箇所での個展を終えて一つ区切りがついた今。次に向けてまた考えていこうと思う。
そして、これからも、目の前にいる一頭一頭を、一番いい形で残すこと。その一枚がデータの中だけではなく、暮らしの中にも残っていくところまで、大切にしていきたいと思う。