会社員を辞めた私が、写真家として考えていること

撮影の舞台裏や雑記

エンジニアとして20年働いてきた私が感じていたこと

約20年、エンジニアとしてものづくりに携わってきた。
製品設計や技術開発に関わる仕事は、自分にとって決して無意味なものではなかったし、そこで培った考え方や積み重ねは、今の自分につながっていると思う。ひとつのものを形にしていく過程には面白さがあったし、技術的な試行錯誤や積み上げの中で問題を解決していくのはとても面白かった。
一方で、製品づくりの仕事は、どうしてもエンドユーザー(商品を購入するお客様)の反応が遠くなりやすい。
自分が関わったものが、誰にどう届いて、どんなふうに喜ばれているのか。それを実感できる場面は、決して多くはなかった。

そうした小さな葛藤を感じ続ける中で、私は少しずつ「もっと小さな単位でものを直接届けること」に惹かれるようになった。
目の前の相手に近いところで、自分の仕事が誰かの時間や記憶に触れていることを感じられる形を求めていった先に、今の活動がある。

写真家として意識している「継続」

2024年6月21日からこの活動を始めて、もうすぐ2年になる。
まだ長いとは言えない時間かもしれないが、この活動の中で強く意識するようになったのが、「継続」ということだ。
会社という組織から脱して個人で動いている今、時間の使い方もどんな行動を起こしていきたいかも、自分で考え自分で決めていかなくてはいけない。
そして、それらの行動は単発で終わるのではなく、それぞれを積み重ねて、ブラッシュアップした形として、次につなげられる継続性をもっていたい。
すべてを自己判断で進めていく必要がある中、そんなことを日々考えながら活動を続けている。

私の活動には、いくつかの支流がある。
・WaterDog.やSunset Portraitのような、テーマ性のある撮影。
・ご依頼を受けて向き合う普段の撮影。
・イベントや撮影会。
・そして、写真展示やブログ、HPを通した発信。
一見すると、それぞれは別々の活動に見えるかもしれない。けれど、私の中ではすべてがつながっている。

テーマ性のある撮影

普段の撮影とは少し違う、テーマ性のある撮影に取り組んできた。
たとえば、WaterDog.やSunset Portraitのようなもの。
こうした撮影は、ただカメラを向ければ撮れるものではなく、場所や天候、犬の動き、その日の空気感など、いろいろな条件が重なって、ようやく納得できる一枚に仕上げられる。同時に、撮影として成立させることは決して簡単ではない。

光が思ったように出ないこともある。
カメラワークと犬の動きが噛み合わないこともある。
ベストショットが撮れたのに、ストロボが発光しなかった!!・・・なんて機材トラブルが何度あったことか(泣)
頭の中で思い描いていた画が、現場では思うように成立しないこともある。
それでも、不確実を持った環境下で考え続け、その時々のベストな選択をしていく経験が、自分の撮影を少しずつ鍛えてくれている気がする。
そして、そうして得た光の読み方や構図の感覚、ベストな瞬間を捉える意識は、その撮影だけで終わるものではないし、これらは普段の撮影の中でも、自分の目線として反映されている。

普段の撮影

普段の撮影を続けていく中で見えるものも、たくさんある。
撮影を依頼してくださる方にとって、その日はただの撮影日ではなく、大切な家族との思い出を残す時間だ。

写真を撮る時間は、ただシャッターを切るだけではない。
オーナーさんと話したり、モデルとなる犬が安心して動ける距離感を探したり、犬と仲良くなったりする時間も含めて撮影だ。

犬との距離感、飼い主さんの想い、その家族らしい空気。
それらは、テーマ性のある撮影とはまた違う形で、自分の写真(着目点、と言ってもいい)に深みを与えてくれるし、こうした撮影の積み重ねから生まれる関係性やコミュニケーションに、私はとても支えられている。
普段の撮影で感じたことが、次のテーマの創出に活きてくることも多い。

感性の見える化

個展やHP運用、ブログで発信をしている。

とりわけ「写真展」は、いわゆる「撮影」とは少し異なる性質を持っている。
写真展を開催したとて仕事を依頼されるわけでもないし、すぐに何か売上が立つわけでもない。
しかし、写真展では、撮影者としての感性を見てもらう機会として、特別な意味があると思っている。
写真を現物として飾ると、スマホの画面では見過ごしてしまうような表情や光の細部が見えてくるし、データに比べて圧倒的な存在感を放つ。
それは、撮影とはまた違う形で、写真と人が出会う場になり得るのだと思うし、自分が大事にしている目線やモデルの表情、さらにはどのような瞬間を大切にしているのかを再確認できる機会ともなる。

ブログやHPは、写真だけでは伝えきれない、活動の考え方や撮影背景を言語として残していく場所となっている。
・なぜその撮影をしているのか?
・どんなことを考えながら撮っているのか?
・どんな出会いや気づきがあったのか?
活動に込めた思いを言葉にすることで、起こした自分の活動や考え方は表現へと昇華される。

このような発信活動は、すぐに何かが変わっていく即効性のあるものではない。
あとから誰かが見返してくれたり、ふとした時に思い出してくれる、といった遅延性を持った性質なのだろう。
撮影の場だけでは届かない部分に、自分の想いや言葉が後から遅れて補完してくれる、そんな印象を持っている。

それぞれの活動がつながっていく

WaterDog.やSunset Portraitのような、一風変わった撮影を育てること。
普段の撮影の中で、依頼してくださる方の大切な時間を残すこと。
イベントや撮影会を通して、出会うきっかけを作ること。
ブログや展示を通して、ふとした時に思い出してもらうこと。
それらは、同じ「撮影」に携わる活動でありながら、それぞれ役割が少しずつ違う。

技術と表現の幅を広げてくれるテーマ性のある撮影。
信頼と関係性を育ててくれる普段の撮影。
新しい出会いを生んでくれるイベントや撮影会。
自分の感性や考え方を見える形にしてくれる展示やブログ。

これらは、どれかひとつだけで成り立っているわけではなく、それぞれの活動が少しずつ影響し合いながら、ひとつの流れになっていく。
会社員を辞めてこの活動を始めたからこそ、「自分なりのやり方」を作り、もっと広げていきたいと思う。
日常撮影も、テーマ性のある撮影も、展示も、ブログも、さらに新しいことへの着手や、新しい表現の発掘。
それぞれの役割を大切にしながら、撮影に来てくださる方にとって「お願いしてよかった」と思える時間を積み重ねていく。
そして、その積み重ねがまた次の表現や出会いにつながっていく。そんな循環を、長い目で育てていきたいと思っている。