景色の中の物語を拾う

撮影の舞台裏とストーリー

はじめに

Sunset Portrait の撮影予定だったけれど、雲の動きを読んで延期を決めた。
延期を判断したのは14時。そのとき私の頭上には、雲ひとつない青空が広がっていた。

青空の下で、延期を選んだ。
決断を下した後も、「本当にこれで良かったのか?」と自問が続く。
窓から空を見上げたり、外に出て風を感じてみたりして。
家でじっとしているのも惜しくて(と、いうよりもいてもたってもいられなくなって)、私はそのまま現地の海へ向かった。

ここからが、今日の本題。

同じ景色でも、見えるものは人によって違う

海に着いた16時過ぎ。太陽は沈みかけ、ゴールデンアワーへと差し掛かる時間帯。
私の目の前にあったのはただの曇り空と、雲から時折見える一筋の光のみ。

2時間前まで晴れていたのが嘘のように、どんよりとした海が目の前にあった。
正直、延期を決断したことにホッとしたのは間違いない。
わざわざ曇天の海に来たいと思ってくることはない。さして見どころのないような天候だが、貴重な曇天の海だから撮影の種を探し始めることとした。

・空の折り重なるレイヤー
・流れる雲の形や厚み
・雲の裂け目から光が落ちる位置
・海面の反射
・波のリズム

そんなものを一つずつ拾いながら、面白そうな場所に着目していく。

〈俯瞰〉まずは景色の構造を読む

最初に撮ったのは、海と空をそのまま捉えた俯瞰の一枚。
その日の空間がどう成り立っているかを観察する段階。
太陽は出ていない。美しいと言える要素はどこにあるだろうか?
そんなことを考えながら、ファインダー越しに景色を見てみたり、あるいは目線を低くしたり、歩きながら角度を変えてみたりした。

14mm ISO100 F6.3 SS 1/400

〈中景〉物語を抜き出す

私がフォーカスしたのは、雲の裂け目から落ちる薄明光線。
光が帯となって下へ降りていくこの現象は、「天使の梯子」とも言われている
俯瞰で見えていた多くの情報の中から、ここを主題とすることに決めた。
その瞬間に、周囲の要素を全部「ノイズ」と判定し、頭の中で構図を描いていく。

私は、表現に必要なものを足すのではなく、
不要なものを削ぎ落とすことで強度を出す、という視点を大切にしている。

今回は、光が落ちる先の貨物船が横ぎる瞬間を狙ってシャッターを切った。

200mm ISO300 F9 SS 1/400

〈マクロ〉触れられる距離の世界へ

次にフォーカスしたのは、波打ち際。私が一番好きな距離感。
波が石に当たり、爆ぜて飛沫となる一瞬。
遠くの方では水面が夕日に照らされてキラキラと光りながら、波打ち際で爆ぜる飛沫を染めていた。
風も弱く、波は穏やか。けれど、拡大してみてみるとなんだか生きているように荒々しくて、質感があらわになってくる。

同じ海、同じ時間、同じ場所。
けれど視点を変えるだけで、まったく別の物語が立ち上がる。

125mm ISO300 F2.8 SS 1/2000

〈まとめ〉

写真は、景色をそのまま撮るものではなく、景色の中にある見せたい断片を集めて、表現するものだと思っている。
今日は夕日は出なかったけれど、三つの異なる表情をとらえることができた。
曇天の海。たまにはいいかなと思った。わざわざ好き好んでくることはないだろうけれど。