表現を開発する

撮影の舞台裏や雑記

表現を「開発」するということ

よく「何でそんなに色々と思いつくんですか?」と聞かれることがあります。
たしかに自分でも、新しい撮り方や表現方法を考えている時間は多いほうだと思います。
でも、私の場合は思いつきをそのまま具現化するというよりは、頭の中でいくつもの要素を組み合わせながら、「モデルの魅力」と「その場にしかない雰囲気の希少性」を、どうやって一枚の中で表現できるかを考え続けているという感覚に近いです。

私にとって、写真表現は「撮る」ものというより、色んなピースを組み合わせて少しずつ形にしていく「開発」に近いものなのだと思っています。

「どんな表情を残したいか」
「どんな空気感や雰囲気を写したいか」
「唯一無二の瞬間は、どのような時に生まれるのか」

そういうことを考えながら、場所や光、動き、タイミングを組み合わせていく。
私にとって写真は、その積み重ねの先に生まれるものです。

安全性と再現性

でも、ただ珍しいことをすれば表現が際立つわけではありません。
難しいことをすれば、良い写真になるわけでもありません。

たとえば、モデルである犬に無理がないこと。
飼い主さんにとって安心できること。
撮影者自身も安全に動けること。
そして、機材を壊さずに撮影できること。
安全性は、どんな表現よりも先に守られるべき前提だと思っています。
なので、見た瞬間に「おお!!これはすごい!でもこの撮影・・・かなり無理してない?」
そういう写真は、私は撮らないです。

加えて、継続して向き合っていける活動であることも大切です。
別の季節や別の日であっても、条件を読み替えながら同じ方向性の表現を目指せること。
つまり、ある程度の再現性を持ちながら育てていけることも、私の中では大事な要素です。

こうした前提の上に成り立つ表現かどうかを、考えています。
つまり私がやっているのは、「いろいろ盛ること」ではなく、事象を構成する多くの要素の中から重要なものを選び、掛け合わせていくことなのだと思います。

掛け算で表現する

文章の中で「掛け算」という言葉を使いましたが、実際にはこんな要素を頭の中で組み合わせて構築をしています。

Where?どこで?
たとえば水辺、風が抜ける場所、空の色がグラデーションする時間帯、背景が抜ける場所。
機材的にも身体的にも難しさが増す環境ですが、そうした条件の中だからこそ、普段は見られない表情や光に出会えることがあります。

What?何を?
ジャンプする瞬間、方向転換するときの体のひねり、光が差し込む一瞬、水しぶきが立ち上がる瞬間、波や流れが変わるタイミング。水中で発生しては消える泡。それを照らす光・・・
私は、止まっている姿よりも、何かが変化している途中の一瞬に強く惹かれます。

How?どうやって?
きらきら光る水面、はじけるように飛び散る水滴、夕焼けのグラデーション、逆光でふちどられた毛並み。ここには、自分が「美しい」と感じる感覚がいちばん素直に表れます。
では、それらをどうやって捉える?
その場の条件や動きをどのようなカメラ設定・機材、写真編集で表現できるかという技術面です。

あとがき

自分の頭の中を、あらためて洗い出してみました。
ここまで読んでくださった方は、かなりコアな方だと思います(笑
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます😊
読み返してみると、思っていた以上に硬めの内容でしたが、こうして言葉にしてみると、自分の中にある少しエンジニアっぽい考え方がよく出ている気がします。

とはいえ、お会いしたことがある方はお分かりかと思いますが、ふだんの私はもう少し軽い感じで話しています。
もし撮影のときなどに「今回はどんな掛け算をしているんですか?」なんて気軽に聞いていただけたら、とてもうれしいです😊